『軽蔑』…だめんず故郷に帰る

本作の見どころとなるのは、やはり世間知らずのお坊ちゃま・カズが引き起こす短絡的な行動の数々で、これがタイトルに謳われている「軽蔑」に繋がっていくのだろうか。
要するにカズというキャラクターは徹底的に観客の共感をスポイルさせるように仕立てられており「もっと分別があれば‥」という彼への逆共感が本作のキモとでも言えます。
実家にいる時は両親や親戚への依存から抜け出せず、家を飛び出した先の新宿でもせいぜいチンピラどまりです。
そんな絵に描いたようなだめんずの男と、そんなダメ男を守るためなら自らの体を利用することも厭わない夜の女‥。
そんな世間からはみ出したアウトサイダーたちへの共感の視線で描かれた本作は、かつて一世を風靡したニュー・シネマ的なテイストを感じたりするが、それだけに物語にやや古めかしさを感じるのは否めないです。
本作の時代設定は明らかにされていないが、今風な携帯電話が登場することから現代であることは間違いないんです。
ところが原作は1992年に発表されており、この20年間の時間の流れによって、物語の賞味期限が過ぎてしまったという感じが拭えなかったです。